体験談 高卒女子でも税務システムのプログラマーになれたお話

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今から30年ほど前。まだパソコンが今ほど身近なものではなかった時代に私はプログラマーになりました。当時、パソコンはごく一部の人達のもので、女性でプログラマーやってるなんて言うと「オタク」と呼ばれていたものでした。合コンに行っても職業を言うと引かれてしまうような感じで・・・
そんな時代に私がどうしてプログラマーなったのか。またどうやってプログラマーになれたのかを実体験からお伝えしたいと思います。

高卒女子・未経験からプログラマーに

まず、私は高校卒業後すぐにプログラマーを目指した訳ではありませんでした。最初は実家を離れてAV機器メーカーの工場に勤務し、その後「若気の至り」で上京し、コンピュータ学校の受付の仕事に就きました。
その時の上司が元プログラマーの方で、話を聞いただけでも忙しそうで大変そうな仕事だと感じました。
でも、この時はプログラマーなんて、自分にはできないだろうなぁ。難しそうだし、数学苦手だし・・・と思っていました。

パソコンとの出会い

コンピュータ学校で働いていた時、私の仕事は受付でしたので、生徒さんが来て、授業開始から終了までの時間が自由な時間で、その時間を利用して空いているパソコンを使っていろいろ自習していいよと言われていました。それまではワープロ(ワードプロセッサーと呼ばれていたものです)は使ったことはありましたが、がっつりとパソコンを触ったのは、この会社に入ってからでした。

この時に自習の様子を見られていたのか、会社から私に受付からインストラクターへの異動の話を持ち掛けられたのですが、家庭の事情により、実家に戻らなければならなくなり、その会社を退職することになりました。
たった3ヶ月というとても短期間しか勤務できなかった会社だったのですが、この当時の元プログラマーの上司が「何かあったら、俺に言ってこい!」と男前なことを言ってくださったのをとても覚えています。

プログラマーになりたい?

そして、実家に戻った私は早く次の仕事を探さなければと、新聞の求人広告を毎日見ておりました。
当時、私はまだ20歳。どんな仕事もできるだろうと思っていました。
とりあえず、興味のある職業になんでも目をつけて、検討している中で「プログラマー募集」という文字を見つけました。
「そういえば、前の職場の上司が元プログラマーって言ってたなぁ・・・」と思いだして、前の職場であるコンピュータ学校に電話をして、その上司に聞きました。
『私でも、プログラマーできますかね?』

元上司の返答は「できる。向いていると思うよ。応募してみたら?」ということでした。

でもこの時、本当にプログラマーを目指していたかというとそうではなく、プログラマーって響きがかっこいいし、給料も高そうだよなーっというのが本音でした。

プログラミングは作文

そうして、元上司から背中を押された感じで、履歴書を書き、面接を受けにそのソフトウェア開発会社へ行きました。
得意科目は国語、苦手な科目は数学、理科と書いたのですが、その会社の社長は履歴書を見て

社長
プログラミングは国語が得意なほう人の方が向いているんですよ
とおっしゃってくださいました。
言わば、プログラミングは作文と似たような作業である。
そう言われるとちょっとは出来そうかなと思えてきました

そして、面接の結果、このソフトウェア開発会社に就職が決まり、私のプログラマー人生がスタートしました。

プログラミングってどうやるの?

まったくの未経験。キーボードを触ったことはあるけれど、何を入力するのかわからない。
そんなところからのスタートです。
本当に何も知らない状態からプログラマーになんてなれるのかしら?と思いました。

アセンブラ、C言語との出会い

入社した会社では「アセンブラ」と「C言語」というプログラミング言語を使って開発していて、
とりあえず新入社員は「アセンブラ」から覚えるように言われました。
ちなみに同期は同じ年齢の女性があと2人いましたので、3人そろっての研修が始まりました。

とにかく聞いたことのない言葉ばかりで、
「アドレス」って何?「レジスタ」って何それ?
本当に未知の世界に飛び込んだ感じでしたね。
「アドレス」と「メモリ」を理解するために、先輩プログラマーの方がりんごとみかんの箱の絵を書いて説明してくれたことを今もうっすらと覚えています。

思っていたより固い仕事だった・・・

入社した会社は全社員10人程度と小規模ですが、財務コンピューター企業のグループ会社なので、母体は割と大きな会社でした。
会社の仕事は、自社の販売しているコンピューターで動作する財務処理や税務処理のシステムを開発すること。
顧客は会計事務所や税理士事務所の先生方という、とても堅く難しそうなイメージ・・・
『何もゲームのプログラミングをしたいわけじゃなかったけど、財務ってよくわからない』
最初は本当に不安でした。

研修後、一番最初に携わった仕事はリストの出力。決められた項目をどういうレイアウトで出力するのかを設計して、実際に範囲指定して出力するまでを作成しました。

その後、出力が出来るようになると入力を担当とステップアップし、最終的には一人でシステムの一連の作業を組めるようになりました。

この当時、先輩プログラマーの方に
「コンピューターは所詮”0″か”1″しか判断できないのだから」と言われました。
その程度のものだから、難しく考えなくても良いという意味だったと思います。

税務システムの開発の仕事

入社して半年後、私は社内でも税務システムチームに配属されました。
税務。すなわち税金の申告に関するシステムで、その中でも私は相続税などの資産税と呼ばれるもののチームの一員になりました。

税務申告システムは、毎年、税金の申告書が国税庁より公表されると、それに合わせて税金の計算を変更したり、申告書の書き方に合わせた出力を作成します。
そのため、税務の専門用語や基本的な知識も覚えなければなりませんでした。
実際に税理士の先生方とお話することも多かったので、こちらもある程度の知識がないとシステムの説明ができませんからね。

例題と実際の事例では異なることも多く、税理士先生方からはいろいろとアドバイスをいただいたり、細かな要望もありました。
この時得た知識は、今でも役に立ってますし、一時期は相続専門のアドバイザー資格を取得しようかと検討したこともありました。
私にとって、税務システムに携われたことはよかったことだと思っています。

オフコンからWindowsへ

私が入社した当時はインターネットもなかった時代で、オフィス専用のコンピューターは事務処理などの仕事しか出来ませんでした。

それから時代が移り、X入社5年後に「Windows95」が世間に登場してきました。
今まではオフコン全盛だった財務システムも、Windows系のパソコンが主流になってきました。

私が勤めていた会社でも、Windowsのマシンで動作するシステムを作成する方針に変わりました。

新しい開発技法

そして、Windows上で動作するシステムを作成していくのにあたり、私がいた会社では「Delphi」という統合開発環境を使用することになりました。

今までアセンブラで一から作っていたものが、「コンポーネント」から「フォーム」に貼り付ける手法に変更になり、画面作成などは以前と比べると、断然スムーズになりました。
またアセンブラと同時にC言語も学習していたため、Delphiに移行しても開発言語に関してはあまり苦労はありませんでした。

モノクロからカラフルへ

ただ今までのオフコンの画面はモノクロでしたので、画面の設計については配置について検討するのみでしたが、パソコンになるとカラーモニターが当たり前です。
そうなると画面設計に配色の検討も必要になります。
この時はセンスも必要よねと考え、カラーコーディネーターの資格を取ったりしました。
でも結局、一般的に見やすい配色にするのが無難でした。

データベースに一苦労

またこの頃から、SQL文を使ってのデータベースの処理を行うようにもなりました。
やり始めたころは「どうしてこんなに処理時間が遅いんだろう?」ということの連続で、どういう命令文を書けば早くなるのだろうと、ネットでいろいろと情報を検索しながら開発を行なっていました。

SQLを覚えていたおかげで、プログラマーを辞めて転職した、システム運用などの仕事でも役立つことが出来ました。
データベースの知識は、ほんと無駄ではなかったと思います。

バリキャリでがむしゃら

そして、プログラマーとして働きだして10年を過ぎたあたりからは、どんどん仕事も楽しくなり、収入も同年代の高卒女子と比較すると多い方ではありました。

ただ残業も多く、終電間際まで働くことも多々ありました。
夜9時で終わると「今日は早く終わったから、飲みに行こう」などと言う感じで、この当時の私は『バリバリのキャリアウーマン』略して『バリキャリ』でした。
プログラマーの仕事は自分に向いていたとも思っていました。

そして現在

そして現在の私はIT業界とはまったく無関係の職業に就いております。
プログラマー人生は結局20年で終了しました。
プログラマーを辞めた理由は結婚して生活リズムが変わったということと身体を壊してしまったことでした。
ただそれだけではなく、自分がどんなシステムを作りたいのか?という目標を失くしてしまったこともあります。
きっとプログラマーには向いていなかったのかもしれません。

それでも私の人生の中でプログラマーを経験したことにより、今話題の「プログラミング的思考」を身に着けることができました。

プログラマーを目指すのに年齢や性別は関係なく、目標を持って取り組めるのであれば、きっとやっていける職業だと思います。

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