
最近話題になることも多い『オフショア開発』、『ブリッジSE』というキーワード。
『オフショア開発』とは何なのか、『ブリッジSE』とはどんな仕事なのか?必要な素養はあるのか?
など、エンジニアを目指す人へのヒントを述べていきます。

情報系未経験で入社後にWeb開発を学びました。
普段から半々程度の割合で通常のシステムエンジニアとしての仕事とブリッジSEとしての仕事をしています。
今回は私自身の経験を基にブリッジSEの仕事を紹介していきます。
ブリッジSEとは?

オフショア開発って?
オフショア開発とは、システム開発などを海外の開発会社に委託する手法のことです。
ベトナム、インド、中国、フィリピンなどの企業に主に人件費削減を目的として委託することが多いです。
実際の費用感としては日本人エンジニアの1/2〜1/3程度になります。
例えば私の会社では10名程度のJavaエンジニアにプロジェクトメンバーとして開発をしてもらっていますが、
日本人Javaエンジニア1人月 : 60〜90万円
ベトナム人Javaエンジニア1人月 : 20〜40万円
程の差があります。
もちろんエンジニアのスキルや雇用形態によって大きく金額は変わってきます。
対義語として日本国内の開発会社に開発業務を委託することを指す『ニアショア開発』があります。
オフショア開発の種類
国内の委託と同様にオフショア開発にもいくつかの契約体系があります。
主にプロジェクト単位で現地開発を行う『請負型』、
エンジニアに来日してもらい契約会社で開発を行う『常駐型(SES)』、
ある程度の長期間契約を結び現地開発を行う『ラボ型』
の3つが知られています。

この中でプロジェクトと現地エンジニアとの橋渡しを担うブリッジSEが必要になるのが『ラボ型』です。
どのようなエンジニアがいるの?

近年日本でのIT技術者不足により、オフショア開発のニーズは高くなってきています。
それにより、現地では優秀なエンジニアが増えてきています。
私の経験したオフショア開発のラボには日本語が堪能なエンジニアも何人かおり、
英語が堪能なメンバーも多いため、コミュニケーションが困難になる場面は少ないです。
ブリッジSEの仕事内容
私の会社では大規模のパッケージ製品を開発しており、主に新規機能開発やバグ修正などをベトナムのラボに依頼しています。
請負型や常駐型ではなくラボ型で委託をした理由は
ラボ型では長期の契約をすることで製品の知識や開発のノウハウを持つ開発ラインを所有することが可能なためです。

ここからは私が経験したブリッジSEとしての仕事内容を紹介していきます。
設計書作成
あらかじめ全ての仕様が決まった状態で依頼をする請負型とは違い、その都度設計書を用意する必要があります。
このとき、国内のエンジニアに対して作成するよりも言葉の選び方や文章の組み立て方に注意を払う必要があります。
日本語の苦手なエンジニアも多くいるため、英語で設計書を作成するケースもあります。
この場合にも単純な文法を用いて相手にわかりやすく記述するように心がけます。
依頼
私の会社では週に1~2回程度Web会議を行い、設計書や発生しているバグについて説明を行っています。
直接話をすることによって解釈に齟齬が生まれないようにする他、コミュニケーションを取って円滑に作業を進められるようにしています。
ここでも英語と日本語を交えてコミュニケーションを取ります。
テスト
開発や修正されてきた機能に対してテストを行い、設計書通りの仕様になっているかを確認します。
設計書通りになっていない場合は明確に箇所がわかるように画面のコピーなどを取って資料を作成し、修正を再度依頼します。
進捗管理はRedmineというツールを用いて行っています。
ソースレビュー
機能のテストと同時にソースレビューも行います。
システムのコーディング規約に則っているか、セキュリティ的に問題のあるコードがないかなどを確認していきます。
問題がある場合は何度でも説明を行い修正してもらいます。
テストとソースレビューでは日本で直してしまった方が正直早いと思うほどすれ違いを生んでしまうこともありますが、人材育成の観点からもどれだけすれ違っても現地で完遂してもらうようにしています。
現地に行くことも!

大型の新規開発がある場合や視察などで現地に行くこともあります!
私が勤める会社では年に1~2回、約1週間程度訪越しています。
ベトナムは日本とは文化や環境が異なるので、訪越の際には特に下記のことに注意するといいと思います。
季節に注意
まずは訪越する時季です。
(会社で行く場合は時季は選べないことが多いと思いますが…)
ベトナムでは5月~10月(11月)が雨季になっており、かなりの高温多湿になるため注意が必要です。
日本のようなシトシトと降り続く雨ではなく豪雨が集中的に降り、その間は外を出歩くことも困難になるので、できれば雨季の時季は避けることをお勧めします。
食べ物に注意

(上記のイラストは『パロット』という孵化する寸前の卵を茹でたものです)
ベトナムでの食事は安い屋台で済ませることが多いと思いますが、日本では馴染みの薄い食材も多いため苦手な人は注意が必要です。
ここでは多くは語らないこととしますがよく調べてから訪越することと食べ物に不安がある人はインスタントの食品等を持ち込むことを強くお勧めします!
オフショア開発のデメリット
私が経験してきた中で、オフショア開発に明確なデメリットを感じたことは正直ありません。
しかし、依頼が難しいことはあります。例えば、
・複雑な日本語を要する場面
・急ぎの作業が必要になる場面
です。
特に日本人が業務などで使用するシステム開発を依頼する場合などでは、説明文などをお任せすることは難しいです。
また、多少ですが時差はありますし、気軽に電話などができるわけではないのでスピーディーな対応が求められる場面では現地の方に依頼をするのは難しいと思います。
しかし、高度な開発を依頼することはできますのである程度納期に余裕がある時点でお願いするなど、こちらのマネジメント次第で大きな力を発揮してくれます。
ブリッジSEの適性

ブリッジSEに必要なスキル
前述のとおりブリッジSEの仕事には様々なスキルが必要です。
中でも特に必要なスキルは
・英語
・設計書作成
・プログラミング
です。
英語はもちろん出来れば出来るだけ良いですが、知識としては高校卒業程度の英語力があれば途方に暮れるほど困ることはないです。
しかし、
・高校卒業程度の英語をきちんと理解し、アウトプットが可能であること
・プログラミングに関する最低限の英単語の知識を持つこと
が前提になります。
また、プログラミングスキルについては自分が『書く』ことよりも『読む』スキルの方が強く求められます。
ブリッジSEを目指したい人は多くのコードに触れ、コードから開発者の意図を読み取る訓練をするのがおすすめです。
私は情報系の知識がないまま入社し、2年目の頭からブリッジSEをしています。
まだ半人前の状態でラボのブリッジSEをすることになり、初めは現地エンジニアのコードの意図が全く分からず、苛立ちを覚えてしまうこともありました。
当時思いついた解決方法はひたすらコードを読む!書く!のみでしたが、この方法に間違いはなかったと今では胸を張って言うことができます。
ブリッジSEに必要なマインド
仕事内容からわかるように、ブリッジSEには根気が必要です。
言葉でのコミュニケーションが完全ではない中で何度でもやり取りを繰り返して、設計書や仕様通りの機能を実現していきます。
その過程では投げ出したくなってしまうようなことも多々ありますが、完成したときの爽快感はたまらないものです。
ブリッジSEの給料はどれくらい?
通常のエンジニアとしてのスキルの他に英語力なども求められるブリッジSEという仕事ですが、給料に差はあるのでしょうか?
私に限った話ですが、今のところ普通のシステムエンジニアと変わらないお給料を貰っています。
私は常にブリッジSEとして仕事をしているわけではなく普通のシステムエンジニアとしての仕事もしているため、あまり給料に差は出ないのだと思います。
別プロジェクトでブリッジSEを専業とする方に常駐していただいていますが、こちらが支払う費用としては普通のエンジニアの1.2倍ほどです。
もちろんスキルや業務内容に依存しますが、
結論としてはブリッジSEの給料はシステムエンジニアの1.0〜1.2倍程度と言えるのではないでしょうか。
さいごに

日本国内でのIT技術者不足により、今後更にブリッジSEが身近な仕事になってくることは間違いないです。
現在もブリッジSEとしての求人は多くありますし、私のように普通のシステムエンジニアがブリッジSEとしての仕事をすることも今後増えてくると思います。
文化や言語の壁を乗り越えてプログラミング言語で世界の優秀なエンジニアと繋がることのできるブリッジSEという仕事に私は日々大きなやりがいを感じています。
この記事を読んでブリッジSEという仕事に興味を持ったプログラミング初心者の方にも、是非ブリッジSEという選択肢を持っていただけると嬉しいです!