パソコンに全く興味のなかった私が気付いたらプログラマになっていた話

プログラムなんて自分には全く向いてない

 そう思っている方は少なくないのではないでしょうか。実は私もそう思っていました。

 幼い頃からパソコンに全く興味もなく、「自分の手を動かしてものを作る職人になりたい」と思っていた私が今ではプログラムの世界にどっぷりつかってしまった訳をお話しましょう。

  

若い日の思い

 
 自分の手を動かしてものを作ることが好きだった私は、機械や電気設備を作る人になりたいと考え電気科がある工業高校に入学しました。

 そこでは電気の基礎や電子部品、電気工事などを勉強し、在学中に電気工事士の資格を取りました。特に実際にものを組み立てる実習が楽しく、卒業後はこのような仕事に就きたいと思っていました。
 

繰り返すプログラムとの出会いと別れ

最初の出会いとしばしの別れ


 高校3年生の時、授業で少しプログラムの基礎があり、たしかC言語を学ぶ機会がありました。
 「たしか」というのは、当時プログラムには全く興味がなかったので授業を聞き流していたからです。
 授業を受けながら、「こんな実体のない仕事は向いてない」と思っていました。
 

いざ就職、そして挫折


 卒業後小さな電子機器設計会社に就職し、電気回路を設計したり半田ごてを握ったりしてものを作るようになり、小さいながらももの作りに携われることに喜びを感じていました。当時は、時折文書を作成したり回路図を作成するためにパソコンを操作していましたが、プログラムのことなど全く頭に上ることはありませんでした。

 しかし、単純にもの作りだけでは仕事が少なくなっていたため若い自分に白羽の矢が立てられ、大嫌いなソフト会社に出向することとなってしまいました。
 

最悪の再会と再びの別れ


 プログラムの「プ」の字も分からない状態でしたが、出向先ではVisual Basicを担当することとなりました。

 出向先の上司は、技術者としてはとても優秀だったのですが人を育てることに少々難のある方でした。
 Visual Basicの分厚い参考書とソフト仕様書を渡され、いついつまでにプログラムを作るようにとだけ言ってさっさと自分の席に戻ってしまうような方です。

 それで仕方なく早速本を読み始めたのですが、その上司が「いつまで本を見てるんだ、読んでないで作業しろ。」などと言ってくるような状態でだいぶ苦労させられました。
 特に当時はインターネットもそれほど普及しておらず調べるのも一苦労でしたので、

 プログラムなんてもう二度とやらない!

 と心に誓いながら何とかプロジェクトを終わらせました。

 契約期間が終了し、自社に戻ったときにはようやくプログラムから解放されたと心から喜んでいました。
 

三度目の出会いと衝撃

  
 とはいえ、自社に戻ってももの作りだけでは難しい状況は変わらず、また別の会社に出向させられることとなりました。しかし、今度はソフト会社ではなく計装系の会社とのことでしたので、幼い頃からやりたかった機械の組み立てや工事ができると期待して出向先に向かいました。

 しかしそこで待っていたのが、PLCプログラムだったのです。

 またもやプログラムと聞いて軽く絶望したのですが、PLCプログラムは自分が知っているプログラムとだいぶ異なっていることに興味をひかれました。

 

PLCプログラムが他の言語と違うと感じた3つの点


 プログラムに抵抗があった私が興味をひかれた3つの点がありました。

1.英語のコードを書かない。
 基本的に「ラダー」と呼ばれる図でプログラムを作成します。
 電気回路がそのままプログラムになっているようなイメージです。

2.動いている様子が簡単に分かる。
 実際にPLCが動いている様子はパソコン上で簡単に確認できます。
 どこがONしているか、今のデータの数値はどうなっているかをすぐに確認できます。

3.機械を動かすためのプログラムである。
 機械を制御することに特化したプログラムなので現場での対応が多いです。

 特に機械を動かすためのプログラムであるという部分に衝撃を受け、プログラムに真摯に取り組もうという気持ちを持つようになりました。
 

PLCプログラムからその先へ

PLCプログラムの世界


 PLCは様々なところで使用されています。それ自体は小型の装置ですが、主に配電盤の中に格納されて工場の電気室やビルの地下室などに設置されています。
 工場の生産ラインを制御したり、空調機やボイラーを制御したりするために使われていますので、通常のプログラムとは対象がかなり異なっています。

 そのため、プログラムを作成するだけではなく現地に行って調整を行ったり変更を行ったりする必要があります。
 ヘルメットや安全靴、安全帯などの保護具を身に付け、機械が動いている中で作業することも少なくありません。

 机の上だけでは終わらず、実際に機械が動いているところを見届けることができるのがこの仕事のやりがいと感じています。
 

次々広がるプログラムの世界


 PLCは非常に便利だとはいえ、現場の作業員が簡単に情報を確認したり操作したり、設定を行ったりする上で画面が必要になります。

 そこで使われるのがタッチパネルです。

 タッチパネルは、PLCの状態を表示したり操作したりするだけでなく、数値の設定を行ったりセキュリティ対策を行うなど様々な機能があります。
 基本的には用意されているパーツを並べて設定するだけなのですが、時には複雑な処理を行うためにちょっとしたプログラムを組むことも必要になります。

 あんなに嫌っていた英語のコードをプログラムすることになったのです。

 それでも少量であることや、何より機械を動かせることでそれほど苦ではなくなっている自分に気づきました。
 
 でもそれだけでは終わりませんでした。やがて要求事項が増えていき、C言語でPLCを動かしたり、PLCと接続したパソコンのためにプログラムを作成したりと、PLCを介して様々な言語に手を出すようになっていきました。

 幼い日に思い描いていた「自分の手を動かしてものを作る職人になる」という道から大きく外れ、いつの間にか実体のないプログラムの世界に飛び込むことになったのです。
 

プログラマになって思うこと


 最初はなる気が全くなかったプログラムの世界に入って20年ほどになります。

 工場での作業は作業日程が決まっているため夜中に作業を行ったり、時には地面に座りながらプログラム作業をしたりすることもあります。
 こうした点を考えると、PLCプログラムは機械制御が本当に好きでないと難しい職種かもしれません。それでも私はあまり後悔していません。

 朝早くから工場に行き、現場作業員たちと一緒にヘルメットをかぶって朝礼を受けラジオ体操をしていると、あの頃なりたかった仕事とはだいぶ違う道に来たとはいえ、ちょっとだけ職人気分を味わうことができるからです。

 他のプログラマにはない計装系のプログラマだからこそ味わえる独特の雰囲気、結構気に入っています。

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