
アセンブラを実際にやらないまでも、知っておくメリットはたくさんあります。
最初に触ったプログラムがアセンブラという、プログラマ歴40年にてそれを肌で実感している筆者が、その入り口を紹介しましょう。
コンピュータの中で最終的に動くのは機械語
コンピュータはCPUやメモリなどからできている

唐突ですが、コンピュータの中身ってどうなっているか知っていますか?
昔の大きなコンピュータから最新のスマートフォンまで、基本的な成り立ちはそんなに変わりません。
CPUと呼ばれる頭脳、メモリやディスクなどの記憶装置、キーボードやディスプレイといった入出力装置というものでできています。
CPUへの命令である機械語

もっとも大事なのは「CPU」です。CPUは「中央演算処理装置」といい、その名のとおりコンピュータの真ん中に陣取って、コンピュータが動くのに必要な、さまざまな計算を行います。
どういう計算をさせるかということを指示するのが、CPUへの命令である「機械語」です。マシン語とも言います。
私たちが普段使う日本語などと違い、CPU=機械にしかわからないから機械語なのですが、これでコンピュータの動きを命令、コントロールするのです。
機械語を人間にわかりやすくしたのがアセンブリ言語
コンピュータは2進数で動く

ところで、コンピュータは0と1で動いている、ということを聞いたことがありますか?
0と1は「2進数」といい、コンピュータが扱う数の基本です。機械語も、この2進数でできています。
たとえば0101101000101010…という感じですが、はっきり言うまでもなくワケがわかりませんよね。ですので、実際には「16進数」という0~9、A~Fの16文字を使って2進数を4ケタごとにまとめています。
さらに、16進数を2ケタまとめて8ケタとした2進数を「バイト」と呼び、これをCPUの命令の基本的な単位とするのが普通となっています。
ちなみに、2進数を4ケタ、8ケタとかいうように表現しましたが、このケタのことを「ビット」と言います。つまり、1バイトは8ビットです。
余談ですが、世界で初めて誕生したCPUであるインテルの4004は、4ケタを基本とした4ビットのCPUでした。その後、8ビット、16ビット、32ビット、64ビットとケタ数が倍増していき、その分、性能が飛躍的に向上しています。
このように機械語はバイトの列です。16進数で3E,02,D5………というような感じですが、これもはっきり言うまでもなくワケがわかりませんよね。
機械語に意味を持たせるアセンブリ言語

ですので、機械語の命令である16進数にわかりやすい意味を持たせようとして考えられたのが、「ニーモニック」というものです。ニーモニックは「記憶を助けるもの」という意味で、このニーモニックを書き連ねていったものが「アセンブリ言語」です。アセンブリ=assemblyとは「組み立てる」という意味です。
アセンブリ言語では、命令である16進数の列を、たとえば「MOV AX, 1000」というように馴染みのある英単語に近いもので表現します。これなら、書けそうと思えますよね?
このアセンブリ言語を機械語に変換するプログラムは「アセンブラ」と呼ばれ、しばしばアセンブリ言語と同じ意味で扱われることもあります。
ですので、この記事ではこれ以降、「アセンブラ」を「アセンブリ言語」を表すものとして書くことにします。
余談ですが、機械語の16進数の列を暗記していて、アセンブラなしにプログラムを作ったり修正できたりする“職人”が、昔はたくさんいたそうです。
しかしこのアセンブラ、徐々に使われなくなってきました。
アセンブラの存在を隠す高級言語
難しく作業効率の悪いアセンブラ

アセンブラはなぜ使われなくなってきたのでしょうか?
CPUに対する命令をいちいち細かくプログラミングしなければならず、初心者には難しく、熟練者にも面倒ということがあるでしょう。
また、CPUの種類によって機械語も異なるので、それぞれにプログラムを書く必要があり、作業効率が悪いということもあるでしょう。
C言語などの登場

このため、もっと簡単に複雑なプログラムが書けて、しかもCPUの違いに依存しない「高級言語」というものが考えられました。
皆さんも耳にしたことがありませんか? 「C言語」などです。中でもC言語は「高級アセンブラ」と揶揄されるほど細かなプログラミングができて、それでも複雑な動きを実現する機能を備えていたので、爆発的に普及しました。
高級言語があれば、アセンブラを無理して使う必要もなく、アセンブラは徐々にその使う機会を減らしていったのです。
ちなみに、高級言語から機械語への変換を行うプログラムは「コンパイラ」と呼ばれます。C言語のコンパイラなら、「Cコンパイラ」と呼ばれます。
アセンブラは今でも現役
こうなると、もうアセンブラを使う、習う必要ってないんじゃないでしょうか?
そんなことはありません!
電子工作や資格試験でも使われている

アセンブラは、PICマイコンと呼ばれる電子工作のためのCPU、ARMと呼ばれる組み込み用のCPUのプログラミングのために今でも使われています。
ですから、皆さんがもし電子機器方面の仕事をやりたい!と考えているなら、アセンブラの習得は良いアピールポイントになるはずです。
さらに、アセンブラは国家資格である基本情報技術者の試験問題にも採用されています。
基本情報技術者試験で使うアセンブラは「CASL2」(キャッスルツー)と言い、現実には存在しないCPUのための仮想的なアセンブラです。
仮想的と言っても、基本的な成り立ちは実存するCPUと同じようなものです。アセンブラを押さえておけば、資格の取得でも有利と言えましょう。
優れたプログラムが書けるようになる

また、高級言語で作られたプログラムは、最終的にはコンパイラによって機械語になります。
機械語すなわちアセンブラがわかれば、たとえばC言語でプログラムを書いているときに、コンパイラによってどのような機械語ができるのか、おおまかにでもイメージできるようになります。
メモリをたくさん消費せず高速で動き、バグ(プログラムのミス)の入りにくいプログラムができやすくなるのです。
これは、アセンブラから始めてC言語など多くの高級言語に携わってきた筆者の実感です。
セキュリティエンジニアへの道も
さらに言えば、たびたび世間を騒がすサイバー攻撃に立ち向かうためのセキュリティエンジニア(ホワイトハッカーと呼ばれることもあります)には機械語の知識が必須とされ、将来への道も開けやすくなるかも知れません。
サイバー攻撃を仕掛けてくるハッカーたちは、機械語レベルでのプログラムの不備を突き、攻撃してきます。これに相対するには、こちらも同レベルの知恵を持って当たるしかありません。
しかしながら、機械語レベルすなわちアセンブラの知識や技術を持ったエンジニアは多数派ではありません。これは、そのような人材になれれば第一線で活躍できる人材にたり得ることを意味しています。
まとめ~アセンブラは強い武器になる!

いかがでしたでしょうか?
アセンブラというもの、そしてその可能性を少しでも感じていただけましたでしょうか?
アセンブラないし機械語は、人間の体に例えると細胞レベルの非常に原始的なものですが、それゆえに奥が深く、理解して使いこなせれば強い武器になることは間違いありません。
皆さんも、アセンブラの世界に踏み出してみませんか?